人間は本当に自己中なのか?【公共財供給実験から読み解く】

こんにちは伊勢です。

このブログではビジネス、教育、恋愛などみなさんの身近に起こる様々な現象を科学的に説明していきます。

今回のテーマは「人間は個人の利益のみ追求するのか」についてです。

人間は生きている限り利益を追求し、自身の生活を営んでいかなければなりません。

社会全体の利益を追求する事は、個人的な利益を安定させてからの話になると考えます。

では人間は本当に社会全体の利益を度外視して自分の利益だけを追求しているのでしょうか。

個人が自分だけの利益を追求することで社会全体の利益が損なわれてしまうことを「社会的ジレンマ」と呼びます。

この社会的ジレンマについてを実感できる実験がありますのでそちらをご紹介します。

 

社会的ジレンマとは(ゼルマー, 2003)】
①A, B, C, Dの4人1組のグループを作り、1人ずつ1,000円与えられる(公共財供給実験)。

②各個人はこの1,000を自分のグループに投資することができる。投資した場合、投資額は2倍になり4人に均等に分配される。

③利益はグループ全体で見た時、4人全員が1,000円投資することで1人当たり2000円の配当金を得られるが、Aが投資をせず、残りの3人が1,000円ずつ投資するとAは最終的に2,500円を得られることになる(この場合、残りの3人の配当金は1,500円となってしまう)。

④結局投資は0円の方が個人としてみた時の利益が一番大きくなるため、最終的には全員が投資をしなくなってしまう予想が立つ(ナッシュ均衡)。

⑤ゼルマー(2003)はこの公共財供給実験のデータを分析し、被検者は自分に与えられた持ち分の37.7%をグループに投資することを確認した。

 

この研究ではたとえ個人の利益のみを追求してかまわない状態であっても人間は自分の資産の約4割を投資に回すことが明らかになりました。

この実験から人間は社会的な利益も考慮しつつ、自身の生活を営んでいることがわかります。

社会全体が良くなることで自身の生活にも彩りが添えられる事は無意識のうちに学んでいるのかもしれません。

「もちつ持たれつ」や「ギブアンドテイク」なんていう言葉は、そんな我々の生き様を表してくれているのかもしれません。

今回は少し難しい話でしたね。

少しでも皆さんの学びにお役に立てれば幸いです。

 

【参考文献】

Zelmer, J.(2003)Linear Public Goods Experiments: A Mate-Analysis, Experimental Economics, 6, 299-310.