こどもに「やる気」を出させるほめ方とは?【学術的根拠あり】
こんにちは伊勢です。
このブログではビジネス、教育、恋愛など皆さんの身近に起こる現象について心理学的に考察していきます。
本日のテーマは「こどもの褒め方」についてです。
子育を考えるとき、
どのように声かけをしていいのか
どのように接してあげればいいのか
悩まれている保護者様は多いと思います。
最近では体罰問題や情報の散乱などで混乱する方も多いと思います。
こどもに本当に必要なしつけとは何か?
こどもの能力を伸ばしてあげるためにどのようにして接してあげれば良いのか?
考える事は枚挙にいとまがありません。
今回はこどものやる気を引き出す「褒め方」についてのお話です。
最近では、「こどもを褒めて伸ばす」と言うキャッチフレーズの下、すべてのこどもの行動や発言、成果に対して褒めると言う風潮が出ています。
しかし、教育における心理学の世界ではただただこどもを褒めれば良いわけではなく、褒め方によってこどものやる気や能力、物事に対しての積極性が変化してくるという研究があります。
ここで、子供の褒め方について面白い研究がありますので見ていきましょう。
褒め方の違いがこどものテストの点数にどう影響するのかをミューラー(1998)らは実験よって検証しました。
【実験内容】
① こどもたちにIQテストを3回実施する。
② 1回目のテストが終わった時に褒め方で2つのグループ「能力を褒める(頭が良い)」、「努力を褒める(よく頑張った)」に分けた。
③ 2回目のテストは難しく、3回目は1回目と同じ難易度のものを実施した。
【実験結果】
① 3回目のテストの結果は1回目のテストと比べて、「能力を褒められた」グループは成績が低下し、「努力を褒められた」グループは成績が上がった。
② 「能力を褒められた」グループは問題を解く前に「自分の能力で解けるのか」を判断し、「努力を褒められた」グループはテストの難易度にかかわらず粘り強く問題と向き合う傾向がみられた。
③ 褒め方の違いでこどものやる気に違いが出ることを証明している。
ミューラーの研究ではこどもの出した「成果」よりも、その成果に向けた「過程」を褒めてあげることがこどものやる気につながることを証明しています。
よく「結果がすべてではなく過程が大事」とは言いますが、なんとなく印象として良いとされていることがこの研究によって明らかにされました。
ただ、過程を褒めるのは簡単ではありません。
過程を褒めると言う事は、具体性を持つことです。
具体性を持つということは、こどもをしっかり観察しないとできません。
観察するためには、大人もこどもと同じ課題認識を持たないと何が重要で、何が必要なのか、がわからなくなるのです。
過程を褒めると言う事は、結果としてこどもに目を向け、「こどものために何が必要なのか」を大人が考える時間を設けることになります。
大切なお子様の成長のために努力する事はご自身の成長にもつながります。
私もぜひ、お子様のために保護者様とともに成長していきたいと考えております。
少しでも皆さんの成長のお手伝いができると幸いです。
【参考文献】
Mueller, C. M., & Dweck, C. S.(1998)Praise for intelligence can undermine children’s motivation and performance. Journal of Personality and Social Psychology, 75, 1,33.
要求を通す交渉術【学術的根拠あり】
こんにちは伊勢です。
このブログではビジネス、教育、恋愛など皆さんの身近にある現象を心理学的に考察していきます。
今回のテーマは「要求を通す交渉術」です。
ビジネスの世界ではギャランティーや仕事の役割分担など交渉がつきものです。
この交渉によって後の仕事のやりやすさや立場が決まってきます。
巷にあふれるマナー講座や心理学本にも仕草や言葉遣い、要求の手順など交渉の時に使えるスキルが書いてありますが、本質的な心理面についてはあまり書かれているものがありません。
では、私たちは交渉を行う際、どのような心構えで交渉を行うのが良いのでしょうか?
講師を行う際の心理的について面白い研究があるのでご紹介します。
営業先や取引先などで交渉を行うときは、相手の立場になって譲ることも必要であることとをコッペルマン(2006)は実験を通して検証しています。
研究の内容を見てみましょう・
【実験内容】
①実験対象者は274人の大学生に2人1組になってもらい、取引先と交渉役に分かれる。
②交渉役には「頑固に対立を恐れず交渉」、「パートナーと仲良くなって交渉」の2つのパターンで交渉してもらう。
③交渉後、どちらのタイプが「将来一緒に仕事をしたいか」選んでもらう。
【実験結果】
①結果として「一緒に仕事をしたい」と選択された割合は「パートナーと仲良くなって交渉」の方が「頑固に対立を恐れず交渉」よりも高かった。
②西洋問わず、一時的な勝利や成功よりも、パートナーシップの重要性を説いている。
③仕事で交渉を行うときは、相手の主張を肯定しながら相手の譲歩を引き出すことが必要である。
この研究の面白いところはその場の交渉の成立や不成立だけでなく「一緒に仕事をしたいか」という観点から調査を行ったところです。
ビジネスはもちろん、教育や恋愛も人とのかかわりの中で生まれる産物です。
特にビジネスの世界ではその場の交渉も大事ですが、長期にわたって売り上げを出すことも非常に重要です。
売り上げを上げるために何をすれば良いのか
どのような心持ちで交渉を行うのが良いのか
この研究では友好関係を築いてから交渉行うのが良い良いとされています。
もちろん、人と友好関係を結ぶためのスキルも心理学の世界では存在します、それはまた別の機会にお話ししたいと思います。
皆さんの学びのお手伝いに少しでもお役に立てれば幸いです。
【参考文献】
交渉時の心構えについての文献は
Kopelman, S., Rosette, A. S., & Thompson, L.(2006)The three faces of Eve: Strategic displays of positive, negative, and neutral emotions in negotiations. Organaizational Behavior and Human Decision Processes, 99, 81-101.
寄付金を多く集めるには【学術的根拠あり】
皆さんこんにちは伊勢です。
このブログではビジネス、教育、恋愛など皆さんの身近にある現象について心理学的に考察していきます。
今回のテーマは少しビジネス寄りになりますが、
「寄付金を多く集めるには」というテーマでお話しします。
読者の中にはご自身で商売をされていたり、寄付金とまでは言わないまでも会費や貯金、募金等々、ある一定の金額を集めるために苦労した経験をお持ちになられる方もいると思います。
なかなかお金を他人から集めるのはストレスだったり、プレッシャーだったり、なかなか良いイメージを持ちづらいのも正直なところです。
例えば、寄付を募る時(募金活動やクラウドファンディングなど)、何が違うと寄付金の額に影響があるのでしょうか?
寄付金を多く集める企画の違いはどこにあるのでしょうか?
テーマやキャッチコピー、リターン(赤い羽根や商品等)などなど、いろいろあると思いますが、ここではお「金の集まり具合の違いの示し方」によって寄付金の集まり具合が違うという研究を紹介します。
ジョンら(2002)は寄付金を募る際、寄付金の集まり具合をどの程度公開すれば、寄付金が集まりやすくなるのかを調査によって明らかにしました。
【実験内容】
① 1台3000ドルするコンピュータを買うお金の寄付を募る。
② お願いの方法を5つのパターンに分けた。
a. 費用の10%は調達できている
b. 費用の33%は調達できている
c. 費用の67%は調達できている
d. お金が集まらなかったら組織の活動資金にする
e. 資金が集まらなかったら返金する
③寄付金を募る際のお願いの仕方を変えることによって、寄付金の集まり方に違いは出るのか?
【実験結果】
①結果として、「 c. 費用の67%は調達できている」とお願いする方法が最も寄付金を集めた。
②寄付者に対して寄付しやすい金額をあらかじめ見せておくことを「種銭(シードマネー)」という。
寄付金を募る内容も金額も一緒であるにも関わらず、寄付金がどのぐらい集まっているかを提示するだけで寄付金の額が違ってくることは内容や額はもとより、
「この企画はどれぐらい集まると成功するのか」
「自分の寄付金によってこの企画が成功するかもしれない」
というような期待感や、責任感にも似た感情で人間は寄付をしていることがわかります。
人間の行動の意思決定は最終的には「感情」です。
この感情を揺さぶれるような「後押し」のことを「シードマネー」と呼びます。
うまくシードマネーを活用することができれば寄付金の額は多くなります。
もちろんシードマネーの存在だけが寄付金の額決める唯一の要因とはなりませんが。
しかし、同じ企画であっても条件が違うことで、人間の行動が変わってくるという事実は心理学を学んでいてとても興味深く大きな発見です。
何かビジネスを行っている人は価格設定をする際、価格の高低だけでなくシードマネーについても考えられるとより価格設定が行えると思います
皆さんの学びに少しでもお力添えができるよ私も研究の日々です。
【参考文献】
シードマネーについての文献は
John A. List and David Lucking – Reiley(2002)The Effects of Seed Money and Refunds on charitable Giving : Experimental Evidence from a University Capital Campain. Journal of Political Economy(110). pp.215-233.
恋はタイミングが重要か?【科学的根拠あり】
こんにちは伊勢です。
このブログでは、ビジネス、教育、恋愛など皆さんに起こる身近な現象について心理学的に考察していきます。
今回のテーマは恋愛における「タイミング」についてです。
恋はタイミング!なんてよく聞きますが、皆さんには恋愛で「タイミング」を痛感するできごとはありましたか?
「出会う順番が逆だったら、彼と付き合っていたのに」
「彼女に告白していれば今は結婚できていたかも」
「今連絡したら迷惑かな」
好きな人ができたときにタイミングについて考えた人は多いと思います。
出会うのがもっと早ければ、とか自分に恋人がいなければ、のような「状況」についても考えることがあったと思います。
心理学的にいうと、人間が恋愛をするのは「自己成長」や「生命維持」など、付き合うことによるメリットが大きいことがあげられ、恋愛をすることは人生に彩りを加えてくれます。
しかし、本当に恋愛にはタイミングが存在するのでしょうか?
絶対的なタイミングは存在しませんが、好きな人と恋人関係になりやすい時期や時間帯についての研究はあります。
ここで恋愛のタイミングについての研究をまとめてみましょう。
告白が成功したり、失敗したりするケースの違いについて栗林(2004)は大学生を対象に調査を行いました。
【調査結果】
①告白の成功率は知り合って3ヶ月以内にするのが一番高い。
②逆に知り合って1年以上経過していると告白が失敗する確率が高くなる。
③告白する時間帯は18時~23時がベスト。
④告白の際は好意と申し込み事項をはっきり対面で伝えるのが効果的。
⑤好意と申し込み事項とは「好きです(好意)。付き合ってください(申し込み事項)」という感じ。
栗林の研究によって男女が恋愛関係に至るには「鮮度」が大事であることがわかりました。
私個人としては3ヶ月はあっという間に感じますが、たしかに年度が変わって夏前に恋人ができたという話はよく聞きます(自身の経験ではないので感覚的にもよくわかりませんでした泣)。
年度始めから夏にかけてカップルできやすいと言うのは研究でわかりましたが、では逆に、カップルが別れるタイミングが多い時期はあるのでしょうか。
もちろん研究されています。
大坊(1988)は恋人関係にある男女が別れやすい時期を大学生を対象にした調査によって明らかにしました。
【調査内容】
① 男女が別れやすい月は男女とも「3月」で全体の4割近くを占めた.
② 次に別れが多い月は女性では「6月」、男性では「8月」となっている.
③ 3月に分かれるカップルが多いのは就職や進学などによる「環境の変化」が大きい.
なるほど、大坊の研究によれば、時期よりも環境の変化によって物理的な距離ができたり、不安や期待といった感情的な起伏が大きいのも別れの要因だととらえられます。
人間が恋人を作るのは精神的な安定を求めるからであり、恋人がいたとしても不安な要素が大きければ恋人関係を主解消するといった手段も選ぶことになるかもしれません。
もちろん必ずその時期が来たら別れるというわけではありません。
関係を維持するために、お互いできることがたくさんあります。
お互いの良好な関係を維持するための方法は、またの機会にブログでお話ししたいと思います。
皆さんの悩みや不安に思っていることを少しでもこのブログで解消できれば幸いです。
【参考文献】
告白が成功するタイミングについては
栗林克匡(2004)恋愛における告白の成否の規定要因に関する研究. 北星学園大学社会福祉学部北星論集.41.pp.75-83.
カップルが別れるタイミングについては
大坊侑夫 1988 異性間の関係崩壊についての認知的研究 日本心理学会第29回大会発表論文集, 64-65.
「手抜き」について心理学的に考察してみる【科学的根拠あり】
こんにちは伊勢です。
このブログでは、ビジネス、教育、恋愛など皆さんの身近にある現象を心理学的に考察していきます。
今回のテーマは「手抜き」についてです。
心理学的な「手抜き」とは「個人の作業効率が落ちること」を意味します
誰しも一度は経験があるかと思います。
勉強や仕事でも疲れてくれば少しは手抜きをしてしまうかもしれません。
弟や妹と遊んでいて手加減をするのも手抜きの1種でもあります。
今回は手抜きについて話をしますが、決して悪いことではなく、作業効率がどういう時に落ちるのかを心理的な知見からお話しします。
例えば皆さんの経験の中で大人数で作業するとき、「自分の作業の役割が小さいな」とか仕事量が少ないな」と感じた事はないですか?
1人で作業を行ってかかる時間が2人で行った場合は本当に半分の時間で終わるか?
3人で3人で行った場合は本当に 1/3 の時間になるか?
答えは「ノー」です。
大人数になればなるほど作業効率が落ちてしまうことを「社会的手抜き現象」といいます。
社会的手抜き現象について面白い経験研究があるのでそれを紹介します。
複数で課題を遂行しようとする際、1人当たりの課題遂行量が無意識のうちに減少してしまうことをラタネら(1979)は実験によって明らかにしました。
【実験内容】
①実験対象者にはできるだけ大声を上げてもらう。
②同時に1人、2人集団、4人集団、6人集団で行ってもらった。
③複数で大声を上げるとき、1人当たりの声量は変化するのか。
【実験結果】
①結果として、1人当たりの音の大きさは1人、2人集団、4人集団、6人集団の順で小さくなっていった。
②集団の人数が増えれば増えるほど1人当たりの仕事量は減少した。
③集団が増えれば増えるほど1人当たりの仕事量が減少することを「社会的手抜き現象」という。
ラタネらの研究によって大人数になればなるほど個人の作業効率が下がることが明らかになり、仕事量は個人差が出ることが裏付けられました。
この社会的手抜き現象は綱引きと似ています。
大人数で引っ張り合いますが、自分が引っ張らなくてもさほど変わらないんじゃないかと思ってしまう人も中にはいるかもしれません。
しかし、プロの綱引き選手は一人一人が自分の役割を把握してしっかり最大の力を発揮しています。
社会的手抜き減少は日常生活で起こる現象のようです。
では、この手抜き現象は必ず起こるものであり、防ぐことはできないのでしょうか?
安心してください。
最近の研究によれば集団内での手抜きを防ぐ方法も研究が進んでいます。
集団内での手抜きを防ぐ研究もここで紹介しておきます。
ウィリアムズ(1989)は集団の中での「手抜き」を防ぐ方法を実験によって提言しているしています。
【実験内容】
①大学の競泳メンバー16名を4人ずつの4つのチームに分ける。
②それぞれのチームで個人の100mと400mリレーのタイムをそれぞれ計測してもらう。
③リレーの前に「個人のタイムはあとでおしえる」と伝えるチームと「何も伝えない」チームに分けた。
【実験結果】
①結果として「何も伝えない」チームは個人で泳ぐよりもリレーのラップタイムは落ちたが、「個人のタイムはあとでおしえる」と伝えられたチームは個人のラップタイムは早くなった。
②たとえ集団であっても、各個人の仕事量を評価するようにすると個人のパフォーマンスは下がらないことが明らかになった。
たとえ集団であっても各個人の仕事量を評価することにより、大きなパフォーマンスを得られることがわかりました。
目標が1つであっても、目標を細分化して評価してあげる事で個人の動機付けにもつながります。
目標を細分化して個人のモチベーションを維持する方法は「スモールステップ法」と呼ばれており、以前ブログでも紹介したので、ご興味ある方はそちらもご覧ください。
動機づけのブログはこちら
「やる気」についての一考察【科学的根拠あり】 - isetada’s blog
心理学の世界で大事なのは、その「現象が実在する」ことを知ることです。
知ることによって解決策を模索し、次へのステップを踏むことができます。
私も皆さんの不安や悩みを解消できるような知識を提供していきたいと思っています。
私も勉強の日々です。
【参考文献】
社会的手抜き減少については
Latane, B., Williams, K., &, S.(1979)Many hands make light the work: The causes and consequences of social loafing. Journal of Personality and social Psychology, 37, 6, 822-832.
社会的手抜きを防ぐ方法については
Williams, K. D., Nida, S. A., Baca, L. D., & Latane, B. 1989 Social loafing and swimming: Effects of identifiability on individual and relay performance of intercollegiate swimmers. Basic and Applied Social Psychology, 10, 73-81.
無料の効果を考える【科学的根拠あり】
こんにちは伊勢です。
本ブログでは教育、ビジネス、恋愛など皆さんの周りにある身近な現象を心理学的に考察していきます。
今回は「無料」についてお話しします。
皆さんは買い物をするとき、値段が気になると思いますがいくらなら安くて、いくらなら高いとか基準があると思います。
しかし、「無料」の2文字が入ると別に興味がなかったものでも、急に欲しくなったり急に試してみたくなったりした事はありませんか?
この「無料」にはとても魅力的で強い興味を引き立たせる効果がありますが、逆にその商品の本質や価値を見失わせてしまう危険性もあります。
ここで1つ無料の効果の大きさを示す研究結果を紹介します。
無料の効果は絶大であることをクリスティーナら(2007)はチョコレートの販売実験によって明らかにしています。
【実験内容】
① 2種類のチョコ(普通のチョコ、高級チョコ)を販売する。
② 2種類のチョコをA「普通のチョコ1円、高級チョコ15円」、B「普通のチョコ無料、高級チョコ14円」の2通りの価格設定で販売した。
③ 販売方法の違いで2種類のチョコの売り上げは変化するのか?
【実験結果】
① 売り上げの割合はAの時「普通のチョコ27%、高級チョコ73%」であったが、Bの時では「普通のチョコ69%、高級チョコ31%」になった。
② 値下げの金額は同じ1円にもかかわらず、普通のチョコを無料にしただけで、無料のチョコの選択率が劇的に増大した。
③ 無料は魅力的であるが、選択を誤ると本当の価値を見失う可能性もあることを認識しなければならない。
無料には絶大な効果がある反面、商品の本質を見失わせてしまう威力を持つことも考慮しなければなりません。
現在、世の中には無料の商品や無料の情報が溢れかえっています。
別にこのブログでは、無料であることが悪いと言っているわけでありません。
無料をうまく使うことによって良い商品を試す機会になったり、知るきっかけになるのはとても素晴らしいことです。
このブログを見ている人の中にはビジネスを志している人も多いと思います。
値段設定を考えるときに、無料をうまく使いこなすことがこれからの時代のビジネスのカギになりそうです。
ここで無料をうまく使うための理論として「フリーミアム戦略」をご紹介します。
フリーミアム戦略とはクリスアンダーソン(2009)が提唱したIT社会におけるビジネス戦略の1つです。
ここでフリーミアム戦略について確認してみましょう
【フリーミアム戦略とは】
①「フリー」と「プレミアム」を合わせた新しい造語
②入り口を無料にしてサービスを利用させ、より高い有料版のサービスに移行させる戦略。
③Webサービスや情報サービスにおいて有効な戦略であると言える。
スマホのアプリゲームでいえば、「基本的に遊ぶ分には無料ですが、そこから強い武器や魔法を手に入れたければお金を払ってください」といったパターンです。
電子書籍でいえば、「ある本の序章だけは無料で、続きを読みたければお金を払ってくださいね。」といったパターンです。
最初のきっかけを作り、続きが気になる状態にしてから売り上げを発生させる効果があります。
これまでは商品を購入して、そこからサービスを受けていましたが、情報社会になりモノが溢れるようになってから少しマネタイズ(お金を支払うタイミング)が後ろにずれた形になります。
何でもかんでも無料がいいと言うわけではありませんが、この無料をうまく使いながら売り上げを出す仕組みを考えるのことが、これからの時代のビジネスのカギとなることでしょう。
研究者として皆さんのプラスになるような科学的な知識を提供する出来るように私も日々勉強です。
【参考文献】
「無料の威力」についての研究は
Kristina, S. Nina, M. and Dan, A.(2007)How Small Is Zero Prise? The True Value of Free Products, Marketing Science, 26-6, 742–757 .
フリーミアム戦略については
クリス・アンダーソン「FREE <無料>からお金を生みだす新戦略.
いじめの根本的な原因を考察【科学的根拠あり】
こんにちは伊勢です。
本ブログでは教育、ビジネス、恋愛など皆さんの周りにある身近な現象を心理学的に考察していきます。
今回は「同調圧力」についてのお話です。
皆さんは「周りの空気を読まないといけない」とか「自分ではおかしいと思っていても周りの人に合わせなきゃいけない」のような心苦しい経験をされた事はありませんか?
この「空気を読まなきゃいけない」、「周りに合わせる」現象は周りの環境によって起こされている可能性があります
自身の考えとは裏腹に、周りに作られた環境が人の考えや行動を変えてしまうことを実証した興味深い研究があるのでご紹介します。
多数派の意見が少数派の意見を変えてしまうことアッシュ(1966)モスコビッチ(1969)は実験用により明らかにしています。
【実験内容】
①実験対象者は自分がみているカードにかかれている棒の長さと同じ長さの棒をもう一枚のカード(カードの中にはA,B,Cの3種類書いてある)から選択する。
②対象者は正解の記号を答えるが仕掛け人の集団は明らかに違う記号を正解だと答える。
③仕掛け人が多くなった時、実験対象者の意見は変わるか。
【実験結果】
①仕掛け人の集団が一致して間違った答えをした場合、対象者の80%以上の人が少なくても1回以上その答えに合わせて、自分の答えを間違った答えに訂正した(これを同調行動という)。
②仕掛け人が1,2人であれば対象者は同調行動をとらなかったが、仕掛け人が3人になると同調行動の効果が大きく変わることがわかった。
自分の考えとは関係なしに、周りの環境に考えや行動を合わせてしまうことを「同調行動」といいます。
この研究では、明らかに間違ている答えであっても3人以上が賛同すると、間違った答えでも正しい答えを言っている人の考えを変えてしまうことを明らかにしました。
これは現代社会でも同じことが言えると思います。
周りがそう言っているから周りに合わせて考えを変えてしまう。
よくないと分かっていてもいじめに参加してしまう。
自身の考えや思いとは裏腹に良くない方向に自分を巻き込んでしまうのはとても辛いことです。
ただこの実験では副産物として以下のような結果も得られています
@仕掛け人が多くても、その中に1人でも対象者に激しく同意してくれる人がいると、同調行動は起きなかった。
つまり自分に賛同してくれる人が1人でもいれば強い意志を持って自分の考えや良いとする行動を表現することができるのです。
誰か1人でも味方になってくれることでその人が救われるのです。
勇気を持って声をかけたり味方になってあげられることも可能ではないでしょうか。
少しでも皆さんの勇気ある行動の手助けになれるような研究結果になってるかなと思います。
私にできる事は研究者として、皆さんのプラスになるような科学的な知識を提供することにあります。
皆さんの自信や安心のために日々勉強の毎日です。
【参考文献】
同調圧力に関する研究は
Moscovici, S., Lage, E,. & Naffrechoux, M.(1969)Inflience of a consistent minority on the responses of a majority in a color perception task. Sociometry, 32, 365-380.
Asch, S. E.(1951)Effects of group pressure upon the modification and distortion of judgments. In D. Cartwright & A. Zander(Eds.), Group dynamics. Harper, 151-162.
Asch, S. E.(1966)Opinions and social pressure. In S. Coopersmith(Ed), Frontiers of psychological research.Freeman.