無料の効果を考える【科学的根拠あり】

こんにちは伊勢です。

本ブログでは教育、ビジネス、恋愛など皆さんの周りにある身近な現象を心理学的に考察していきます。
今回は「無料」についてお話しします。

皆さんは買い物をするとき、値段が気になると思いますがいくらなら安くて、いくらなら高いとか基準があると思います。

しかし、「無料」の2文字が入ると別に興味がなかったものでも、急に欲しくなったり急に試してみたくなったりした事はありませんか?

この「無料」にはとても魅力的で強い興味を引き立たせる効果がありますが、逆にその商品の本質や価値を見失わせてしまう危険性もあります。

ここで1つ無料の効果の大きさを示す研究結果を紹介します。

 無料の効果は絶大であることをクリスティーナら(2007)はチョコレートの販売実験によって明らかにしています。

【実験内容】
① 2種類のチョコ(普通のチョコ、高級チョコ)を販売する。
② 2種類のチョコをA「普通のチョコ1円、高級チョコ15円」、B「普通のチョコ無料、高級チョコ14円」の2通りの価格設定で販売した。
③ 販売方法の違いで2種類のチョコの売り上げは変化するのか?

【実験結果】
① 売り上げの割合はAの時「普通のチョコ27%、高級チョコ73%」であったが、Bの時では「普通のチョコ69%、高級チョコ31%」になった。
② 値下げの金額は同じ1円にもかかわらず、普通のチョコを無料にしただけで、無料のチョコの選択率が劇的に増大した。
③ 無料は魅力的であるが、選択を誤ると本当の価値を見失う可能性もあることを認識しなければならない。

 

無料には絶大な効果がある反面、商品の本質を見失わせてしまう威力を持つことも考慮しなければなりません。

現在、世の中には無料の商品や無料の情報が溢れかえっています。

別にこのブログでは、無料であることが悪いと言っているわけでありません。

無料をうまく使うことによって良い商品を試す機会になったり、知るきっかけになるのはとても素晴らしいことです。

このブログを見ている人の中にはビジネスを志している人も多いと思います。

値段設定を考えるときに、無料をうまく使いこなすことがこれからの時代のビジネスのカギになりそうです。

ここで無料をうまく使うための理論として「フリーミアム戦略」をご紹介します。

フリーミアム戦略とはクリスアンダーソン(2009)が提唱したIT社会におけるビジネス戦略の1つです。

ここでフリーミアム戦略について確認してみましょう


フリーミアム戦略とは】
①「フリー」と「プレミアム」を合わせた新しい造語
②入り口を無料にしてサービスを利用させ、より高い有料版のサービスに移行させる戦略。
Webサービスや情報サービスにおいて有効な戦略であると言える。

 

スマホのアプリゲームでいえば、「基本的に遊ぶ分には無料ですが、そこから強い武器や魔法を手に入れたければお金を払ってください」といったパターンです。

電子書籍でいえば、「ある本の序章だけは無料で、続きを読みたければお金を払ってくださいね。」といったパターンです。

最初のきっかけを作り、続きが気になる状態にしてから売り上げを発生させる効果があります。

これまでは商品を購入して、そこからサービスを受けていましたが、情報社会になりモノが溢れるようになってから少しマネタイズ(お金を支払うタイミング)が後ろにずれた形になります。

何でもかんでも無料がいいと言うわけではありませんが、この無料をうまく使いながら売り上げを出す仕組みを考えるのことが、これからの時代のビジネスのカギとなることでしょう。

研究者として皆さんのプラスになるような科学的な知識を提供する出来るように私も日々勉強です。

 

【参考文献】

「無料の威力」についての研究は

Kristina, S. Nina, M. and Dan, A.(2007)How Small Is Zero Prise? The True Value of Free Products, Marketing Science, 26-6, 742–757 .

フリーミアム戦略については

クリス・アンダーソン「FREE <無料>からお金を生みだす新戦略.