昨今の動機付けについてまとめてみた【科学的根拠あり】
こんにちは。伊勢です。
このブログではビジネス教育恋愛など身近な現象を心理学的に考察していきます。
さて、今回はビジネスでも教育でも役に立つし動機付けについてのお話です。
動機付けにはこれまで「内発的動機付け」と「外発的動機付け」について論じられてきました。
内発的動機付けとは「行う行為自体に価値を見出し、自分自身でその行為を継続させていくこと」です。
一方、外発的動機付とは「その行為に見合った対価を得ることでその行為を継続させていくもの」です。
例えば内発的動機付けにはサッカーリフティングが上手くなることがうれしい、数学で難しい問題が解けるようにと点数が上がる、などがあります。
例えば外発的動機付けでいえば、テストで100点を取ったらお小遣いがもらえる、勉強を頑張ったらケーキが食べられる、試合に勝ったら褒めてもらえる、などがあります。
これまで教育の世界では外発的動機付と内発的動機付けは明確に区別されていました。
また、外発的的動機付けよりも内発的動機付けの方が良いものであるとされ、研究が進められておりました。
しかし、最近の研究では内発的動機付けと外発的動機付には明確な区別がなくむしろ対価を支払うことでその人の良い行動が持続することも最近の研究では明らかになっています。
例えばここで1つ外発的的動機付がその人の良い習慣を作り出すことを明らかにした研究があるので紹介します。
ガリーら(2009)は報酬を与えることで人間の習慣を変えられるのかを実験によって調査しました。
【実験内容】
①学生を実験対象群と実験非対象群に分ける.
②対象群には1ヶ月で8回ジムに通った人には報酬として100ドル払うことを伝える.
③1ヶ月後報酬をやめる.
【実験結果】
①対象群で1ヶ月に8回ジムに通うことができた学生は報酬をやめてもジムに通うようになった.
彼らの研究でおもしろいところは報酬を与えることをやめても学生はジム通いをやめなかったところにあります。
つまり学生は最初はお金のためにジムに通ったかもしれませんが、次第にジムに通うことで得られるメリット(健康になれる、見た目が変わる、友達ができる等)に気付いたことになります。
この時点で動機付けには内発的動機づけにも外発的動機づけにも良い部分があり、上下の話は問題外であることが分かります。
ガリーらの研究によって、外発的動機付けも使い方によっては良い習慣、そして良い行動を起こさせる手段になり得ることが明らかになりました。
そもそも人の行動は、目標達成するために手段でありある何らかの対価を得られなければその継続が難しくなってきます。
動機づけと一緒に考えなければならないのが「ペナルティー」の話です。
動機付けの対極にいるのがペナルティーの問題です。
ペナルティーとはルールや目標達成できなかったときの罰則になります。
ペナルティーの役割とは本来ルールを守らせたり目標を達成させるためのネガティブな動機付けとして存在していました。
悪い習慣があればペナルティーを課して良い習慣へ修正するのがペナルティーの本来の目的でした。
しかし、このペナルティーの存在が時として悪い習慣を継続させてしまう手段になり得ることもあるのです。
ペナルティーが時として逆効果になってしまうことを研究したのがウリら(2000)です。
ウリら(2000)は保育園で迎えにくるのが遅れた保護者に対して少額のペナルティを課し、その影響を調べました。
【実験内容】
①保育園10カ所のうち6カ所の保育園で10分以上迎えにくるのが遅れた保護者に対して一律3ドルのペナルティを課す。
②ペナルティーを課すことで迎えが遅くなる保護者は減るのか。
③検証後、ペナルティーを課すことをやめるとどうなるか?
【実験結果】
①ペナルティを課した保育園では、ペナルティを課さなかった保育園に比べて迎えに遅れてくる保護者は大幅に増加した.
②その後、ペナルティを課すことをやめても迎えに遅れてくる保護者は増加したままだった.
皮肉にもペナルティーを課すことによって悪い習慣はより悪い方向へ動機付けられてしまいました。
つまり、3ドルという少額のペナルティーが保護者にとって「3ドル払えば迎えに遅れても大丈夫」と言うマイナスの動機付けにつながり結果として迎えに遅れてくる保護者を増加させてしまったのです。
我々は何かよくないことをしたときにペナルティーを課して修正しようとしますが、それは、時として全く逆の効果になることも知っておかなければなりません。
ここで動機付けについてのおさらいです。
①動機付けには良い習慣を持続させる効果がある.
②内発的動機付けも開発討議的動機付けも良い習慣を作るための手段に過ぎない.
③ペナルティーは時として悪い習慣を生み出し増加させてしまう危険性がある
ぜひ皆さんも動機付けとペナルティーのバランスを考えていただければといただければ幸いです。
【参考文献】
ガリーの研究は
Gary Charness and Uri Gneezy(2009)Incentive to Exercise. Econometrica(77). pp909-931.
ウリの研究は
Uri Gneezy and Aldo Rustichini(2000)A Fine Is a Price. Journal of Legal Studies(29). pp.1-17.