我慢することは得か?【マシュマロ実験から読み解く教育】

みなさんこんにちは伊勢です。

このブログではビジネス、教育、恋愛などみなさんの身近に起こる様々な現象について科学的に説明していきます。

今回のテーマは「我慢強い子供は得か損か」についてです。

人間は忍耐力が大事とよく耳にしますが、果たして本当に我慢強い人は得をするのでしょうか。

この我慢強さと将来的な利益について研究されたものがありますのでそちらをご紹介します。

こどものころから我慢ができる子は大人になっても優秀であることをミシェルら(1970)は保育園児を対象に調査を行い明らかにしている。

 

【調査内容】

①対象は保育園児186名。

②こどもの前にマシュマロを置いて「私が戻ってくるまでこれを食べなければ、もう一つマシュマロをあげる」と告げて部屋を出る。

③マシュマロを、我慢できずに食べる子、我慢して2つ手に入れる子が出てくるがその子たちを数年にわたり追跡調査を行う。

 

【調査結果】
①マシュマロを我慢して2つ手に入れたこどもは全体の3分1であった。
②その後、我慢できた子は我慢できなかった子に比べて大学入試の点数が高く、肥満や薬物依存症になりにくいことが判明した。
③この調査から、忍耐力には個人差があり、それは幼少期に備わっていることがあきらかになった。

 

この実験は「マシュマロ実験」と言って教育心理学における幼少期と将来性について実験したとても有名な研究です。

もちろん教育の世界では環境から受ける影響が大きいため、その瞬間にこどもの人間性や才能を決定づける事はしません。

しかし、この実験では幼少期における忍耐強さがこどもの将来の利益を生むことを示しています。

もちろん、現代ではあらゆる選択肢があるため、全てにおいて我慢しなければいけないということはありません。

現代では、仕事や学校、友達などたくさんの選択肢があり、自身で進む道を変えることも可能です。

ただ、しつけのレベルで言うと、我慢強いという事は集中力があったり、誰かに譲ることができたりとその子の将来的な利益を生む人間性が備わっているとも読み取ることができます。

そういう意味では適切なしつけがこどもの将来にとって有益であることは間違いありません。

子育てで悩まれている保護者の方も多いと思います。

そういった方々の学びに少しでもお役に立てるのであれば幸いです。

今日もよい1日をお過ごしください。

 

【参考文献】

Mischel, W. & Ebbe, E.(1970)Attention in Delay of Gratification, Journal of Personality and Social Psychology, 16, 2, 252-256.

会話の内容よりも大切なものがある!【メラビアンの法則を解説します】

こんにちは伊勢です。

このブログではビジネス、教育、恋愛などみなさんの周りに起こる様々な現象を科学的に説明していきます。

今回のテーマは「会話の内容よりも大切なものは何か」です。

私たち人間はコミニケーションを図るとき、言葉を使う唯一の生き物です。

言葉を使うことによって情報の伝達がスムーズになり、より多くの情報を伝えることができるようになりました。

しかし、コミニケーションの本質というものは会話の内容よりもノンバーバル(非言語)の部分が多いことも言われています。

今回は会話の内容よりも大切な見るべきポイントについてお話ししようと思います。

メラビアンは会話の内容よりも表情や音声の方が相手の印象に影響を及ぼしていることを実験を通して明示しました。

 

【明示内容】

①相手が自分に対してどのくらいの好意を持っているかは一定の法則がある。

②相手の自分に対しての好意は、表情(77%):音声(37%):会話内容(7%)の割合で決定される。

③この会話内容ではなく、相手の表情や声色で自分の印象が決まることを「メラビアンの法則」という。

 

このメラビアンの法則はコミニケーションを図る上で情報を汲み取る際の重要なポイントを示してくれる有名な法則です。

皆さんもご経験はあると思います。

 

話さなくてもなんとなく不機嫌な人

いつになく上機嫌な人

なんだかとても落ち込んでいる人

 

これらの人たちは特に何を話すわけでもなく、雰囲気その人がどういう状態なのかを判断することができます。

恋人関係においても似たようなご経験はございませんか。

 

彼女が不機嫌そうな顔をしている

彼氏がどうしたのって聞く

彼女はぶっきらぼうに「何でもない」と言う

彼氏は「怒ってるじゃん」と反論し言い争いになる

 

彼女は明らかに不機嫌そうにしているわけで、会話の内容は「何でもないと」いっていますが、彼には彼女が怒っているという印象を受けたに違いありません。

コミニケーションはとても難しく奥が深いです。

言葉だけでなく相手の表情、身振りや手振り、声の抑揚など多くの情報からその人が何を考え何を思っているかを読み解く努力をするのもコミュニケーションの大切なスキルだと思います。

これを機会にぜひ、コミュニケーションを図る際は、眼ラビアンの法則を思い出してください。

心理学の世界に引き込まれること間違いなしです。

皆さんの学びに少しでも役に立てれば幸いです。

本日も1日良い1日をお過ごしください。

 

【参考文献】

Mehrabian, A(1972)Nonverbal communication. Aldin-Atherton.

良くないギャップの見せ方が判明!

こんにちは伊勢です。

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今回のテーマは「印象はキャンプによって変化するのか」です。

恋愛や仕事など第一印象はとても重要です。

第一印象によってその後の対応が変わったり将来的に付き合いがあるかどうかも決まります。

しかし、第一印象がよくても、その後のかかわりによって悪い印象になってしまうとせっかくの交友関係がなくなってしまう可能性もあります。

この、印象変えてしまう出来事のことを「ギャップ」と表現します。

ギャップは悪い印象から良い印象に変わることもありますが、良い印象から悪い印象になることもあります。

では、ギャップはどういう順番で好印象と悪印象の見せ方によって印象が変わるのでしょうか。

ギャップの見せ方によってその人の印象が変わることを調査した研究がありますのでそちらを紹介します。

アロンソンとリンダ―(1965)は人は自分に良い評価をくれる人に良い印象を持つことを実験を通して明らかにしています。


【実験内容】
①被検者と実験者が対話をする。

②被検者に対する実験者の態度は「①悪い→良い」、「②良い→良い」、「悪い→悪い」、「良い→悪い」の4つのグループに分けられる。

③被検者の印象が最も良いのは、そして最も悪いのはどのグループか?

 

【実験結果】
①最終的に実験者の印象が一番よかったのは「①悪い→良い」態度をとったグループであった。
②逆に実験者の印象が一番悪かったグループは「④良い→悪い」態度をとったグループであった。

 

この実験で分かった事は、良い印象が良いのか、悪い印象が良くないのかではなく、最初の印象(良い方向にも悪い方向でも言える)との「落差」が大きいと印象が大きく変わってしまうことです。

注目するべきなのは、良い印象から悪いギャップを見せた時の落差です。

この実験は、最初に良い印象を与えるのは重要だが、やりすぎると信用を失うことになりかねないことも示唆しています。

良い印象はお互いの信頼関係によって築かれます。

信頼関係を築くのはとても大変で時間のかかることですが、それを崩してしまうのはあっという間です。

お互いを尊重しあいながら人との信頼関係を構築できるようなコミニケーションをとることがとても重要です。

これからも皆さんの学びのお手伝いができるよう努力してまいります。

今日もよい1日をお過ごしください。

 

【参考文献】

Aronson, E., and Linder, D.(1965)Gain and loss esteem as determinants of interpersonal attractiveness. Journal of Experimental Social Psychology(1). pp.659-663.

 

人の記憶量の限界は?「不思議な数字7±2」

みなさんこんにちは伊勢です。

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今回のテーマは「人の記憶量はどれぐらいなのか」についてです。

みなさんは学校のテストや仕事、付き合い、コミニケーションを取るときにテキストを記憶したり、人の顔を覚えたり、好みを把握したりと記憶をしなければならない時があると思います。

私も学生時代、学校のテストが近くになるといちど見たものを記憶できるようになればいいのになぁと思ったことが何度もあります。

一度お会いしたことがある、人でも顔は覚えているんだけど名前が全然出てこないなど歳を感じることもあります。

では、人はどれぐらいの量を記憶できるのでしょうか。

記憶には「短期記憶」と「長期記憶」があります。

長期記憶は自分の名前や家の住所、自分の携帯の電話番号などを覚えていることです。

こちらについては定着レベルまで達しているので記憶喪失にでもならない限り忘れる事はありません。

短期記憶は一時的な記憶のことで、人間が生きていく上で必要な情報や知識はこちらに蓄積されることになります。

定着しているわけではないので新しい情報が入ってくると古い情報から消されてしまうのが通常です。

ではこの短期記憶によって1度にどれぐらいの量を覚えることができるのでしょうか。

人間が一度にどれくらいの項目を覚えられるのかを研究したものがありますので、紹介します。

人間が一度に覚えられる記憶容量をミラー(1956)は「不思議な数7±2」の法則として説しました。


【「不思議な数7±2」とは】

①人間が一度に覚えられるのはおよそ7項目である。

②覚えやすい項目(曜日、7つの大罪七福神など)は7と関係があるものが多い。

③各項目に意味を付けることで長期記憶になり忘れにくくなる。

 

ミラーの研究によって、人間がいちどに覚えられる項目は5~9個であることがわかりました。

ただ、ミラーが言うように各項目に意味をつけることでその量は大きくすることもできます。

例えば「325748791」をすぐ覚えろと言われても難しいかもしれませんが、「123456789」であればすぐに覚えられると思います。

これは「123456789」を1つの項目として捉えていることにより覚えられるのです。

つまり、覚えたい項目に意味をつけたり、いくつかの項目をひとまとめにすることによって覚えられる量は増えるということになります。

人に会ったら名前、顔、好み、覚える

1個単語覚えたら例文を覚える。

各項目を中心に意味付けをしていくことで記憶量が増えていきます。

ぜひテスト勉強や仕事にご活用いただければ幸いです。

今日もよい1日をお過ごしください。

 

【参考文献】

Miller, G. A.(1956)The Magical Number Seven, Plus or Minus Two Some Limits on Our Capacity for Processing Information. Psychological Review, 63, 2, 81-97.

勝負服の色は何色がいいのか【ロマンティックレッド効果について】

こんにちは伊勢です。

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今回のテーマは「勝負服」についてです。

みなさんは大事な会議やデート、発表会などそのシーンに合わせて着ていく服を選ぶと思いますが、ここ1番!というときにはどんな服を選びますか?

スーツやジャケット、体操着など服の種類はあれど服の「色」についてみなさんは意識していますでしょうか。

もちろん、服装によって印象が大きく変わる事は科学的にも証明されていますが、今回は服の色について解説していきます。

着ている服の色によってその人の魅力が変化することを示した研究がありますのでそれをご紹介いたします。

エリオット(2008)は赤いものを身につけることで魅力度が増す「ロマンティックレッド効果」を提唱した。

 

【ロマンティックレッド効果とは】
①男性は赤い服を着た女性に魅力を感じる。
②女性は赤い服を着た男性に力強さを感じる。
③服だけでなく、男性ならハンカチやネクタイ、女性ならバッグやネックレスでも効果がある。

 

赤いものを身につけることで男性でも女性でもその人の魅力が増すことがエリオットによって示されています。

ここで大事なのは赤い服でなくても良いことです。

男性ならネクタイやハンカチ、女性ならバックやネックレスでもその人の魅力が増すことが明らかになっています。

みなさんも本日身に付けていくものに1つ赤いアイテムを持っていくのもいかがでしょうか。

このブログではビジネス、教育、恋愛などみなさんの身近に起こる様々な現象について科学的に説明していきます。

皆さんの学びのお役に立てれば幸いです。

今日もよい1日をお過ごしください。

 

【参考文献】

Elliot, A. J., & Ross, Niesta, D.(2008)Romantic red: Red enhances men’s attraction to women. Journal of Personality and social Psychology, 95, 1150-1164.

 

笑う門には福来る【笑顔は利益をもたらすのかを考察しました】

こんにちは伊勢です。

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今回のテーマは「笑顔は得をするか」についてです。

笑う門には福来たる

なんていうことわざもありますが、挨拶したりコミニケーションとっていて笑顔の人にはやはり好印象を持ちます。

その人と話していると楽しい

笑ってもらうだけで嬉しい

逆にその人の笑顔のために何かしてあげたい

笑顔には自然とコミュニケーションを円滑にしてくれる魔法のような効果があります。みなさんの中でも感覚的に笑顔はコミニケーションツールとして「良いもの」であると認識されていると思いますが、果たして笑顔にはコミュニケーションを取る時の有効な手段であることは科学的には証明されているのでしょうか。

笑顔の効果について調べた実験がありますのでご紹介します。

大きな笑顔が人の心を惹きつけることをティッド(1978)はカクテルラウンジを実験場所にして明らかにしました。

 

【実験内容】
①対象者はラウンジの客として来た男女48名。
②23歳の女子大生ウェイトレスが「小さく微笑んで接客」と「大きな笑顔で接客」の2つの接客をする。
③笑顔の大きさでチップに差は出るのか?

 

【実験結果】
①「大きな笑顔で接客」してもらうチップの方が「小さく微笑んで接客」してもらうチップよりも2倍以上多かった。
②男性客も女性客も「大きな笑顔で接客」されたときの方がチップを多く渡した。
③笑顔を作るときは「フルスマイル(口角を思い切り上げる、上下の歯を見せる)」がおすすめです。

 

テッドの実験によって、笑顔が好印象を招き、飲食のサービス業ではチップを多くもらうことが明らかになりました。

笑顔によってチップが増えたというよりも、笑顔が本人の好印象を生み、笑顔を向けられた人の動すらも変えてしまうことが明らかになりました。

笑う門には福来たると言いますが、コミニケーションを取る時は笑顔でいることの方が我々にとっては良いことがあるのかもしれません。

さあ本日もフルスマイルで参りましょう。

 

【参考文献】

Tidd, K. L., & Lockard, J. S.(1978)Monetary significance of the affiliative smile: A case for reciprocal altruism. Blletin of the Psychonomic Society, 11, 344-346.

 

 

人間は本当に自己中なのか?【公共財供給実験から読み解く】

こんにちは伊勢です。

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今回のテーマは「人間は個人の利益のみ追求するのか」についてです。

人間は生きている限り利益を追求し、自身の生活を営んでいかなければなりません。

社会全体の利益を追求する事は、個人的な利益を安定させてからの話になると考えます。

では人間は本当に社会全体の利益を度外視して自分の利益だけを追求しているのでしょうか。

個人が自分だけの利益を追求することで社会全体の利益が損なわれてしまうことを「社会的ジレンマ」と呼びます。

この社会的ジレンマについてを実感できる実験がありますのでそちらをご紹介します。

 

社会的ジレンマとは(ゼルマー, 2003)】
①A, B, C, Dの4人1組のグループを作り、1人ずつ1,000円与えられる(公共財供給実験)。

②各個人はこの1,000を自分のグループに投資することができる。投資した場合、投資額は2倍になり4人に均等に分配される。

③利益はグループ全体で見た時、4人全員が1,000円投資することで1人当たり2000円の配当金を得られるが、Aが投資をせず、残りの3人が1,000円ずつ投資するとAは最終的に2,500円を得られることになる(この場合、残りの3人の配当金は1,500円となってしまう)。

④結局投資は0円の方が個人としてみた時の利益が一番大きくなるため、最終的には全員が投資をしなくなってしまう予想が立つ(ナッシュ均衡)。

⑤ゼルマー(2003)はこの公共財供給実験のデータを分析し、被検者は自分に与えられた持ち分の37.7%をグループに投資することを確認した。

 

この研究ではたとえ個人の利益のみを追求してかまわない状態であっても人間は自分の資産の約4割を投資に回すことが明らかになりました。

この実験から人間は社会的な利益も考慮しつつ、自身の生活を営んでいることがわかります。

社会全体が良くなることで自身の生活にも彩りが添えられる事は無意識のうちに学んでいるのかもしれません。

「もちつ持たれつ」や「ギブアンドテイク」なんていう言葉は、そんな我々の生き様を表してくれているのかもしれません。

今回は少し難しい話でしたね。

少しでも皆さんの学びにお役に立てれば幸いです。

 

【参考文献】

Zelmer, J.(2003)Linear Public Goods Experiments: A Mate-Analysis, Experimental Economics, 6, 299-310.